あの夏に新宿という街で
この夏、〈新宿〉という街の印象が鮮烈に残る作品に出合いました。香納諒一『あの夏、風の街に消えた』(角川書店)です。
その一節から…。「あの夏に新宿という街で自分が巻き込まれた出来事と、それに何人もの人たちとの出逢いによって、僕は自分自身の人生にむかって最初の一歩を踏み出せたような気がしてならない。世界というものが、それまで自分で思っていたよりもずっと大きくて面白いことを教えてくれたのは、あの夏のあの街だったように思うのだ」。
雑誌連載時のタイトルは『風の街』でしたが、単行本出版の際に上記の題に変更。そこに込められた意図を読み解くのも楽しみの一つでしょう。主人公が巻き込まれた出来事が、あたかも風に乗るように謎が謎にからみついていくストリーはじつに奇想天外の面白さです。
新宿御苑の近くにある蔦屋敷や角筈ホテルなどは架空の場所だと思いますが、一度は足を踏み入れてみたくなる郷愁を感じました。ちなみに、著者は1999年に『幻の女』で日本推理作家協会賞を受賞。正統派ハードボイルドの名手として高い評価を得ています。
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