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狂歌師の名残がよく似合う

 

 「世の中はわれより先に用のある 人のあしあと橋の上の霜」は、平岩弓枝の『橋の上の霜』のタイトルにもなった四方赤良(よもあから)の狂歌です。この小説の主人公はもちろん四方赤良で、のちの大田蜀山人(南畝)です。

 平岩弓枝の生家は、小田急線の駅名にもある代々木八幡という神社。そこから少し離れたところに新宿十二社の熊野神社があります。この地一帯は、江戸時代には風光明媚な行楽地で文人墨客がしばしば訪れたそうです。蜀山人もその一人で、境内には彼の銘になる手洗岩があります。

 また青梅街道を中野方面へ少し向かうと右側に常円寺があり、ここに辧々館湖鯉鮒狂歌碑があります。そこには「三度たく 米さへこはし柔かし おもうままには ならぬ世の中」の歌が刻まれています。これも蜀山人の書によるもので、湖鯉鮒も蜀山人と同じく幕臣であったとか。狂歌は俳諧・滑稽を詠む風流。新宿の街には狂歌師の名残がよく似合う。


    常円寺(写真・左)と熊野神社(右)

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