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鳴子坂で汽笛が聞えた
井伏鱒二の「荻窪風土記」(新潮文庫)の中に次のような一節を見つけました。
「大震災後も、品川の汽笛は、鳴子坂(なるこざか)あたりでならまだ聞えていた」
大震災とは、大正12年(1923)の関東大震災のこと。その当時は、品川の岸壁を出る汽船の汽笛が新宿・鳴子坂まで聞えていたというのです。風が音をはこんで来たのでしょうか。その後、建設ラッシュが始まり、汽笛の音は聞えなくなりました。
いずれにせよ、大震災前までの新宿には、汽笛の音の伝播を妨げるものが何もなかったようです。そしていま、雑踏の鳴子坂に佇み目を閉じてみる。すると、「ボォーッ」という汽笛の音が風にはこばれて来たような気がしました。

現在の成子坂(鳴子坂)付近
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